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ラノベ作家希望です。遊び半分で登録してみました。

とあるシリーズからみる筋ジストロフィー

とある魔術の禁書目録』という作品を知っているでしょうか。

ライトノベル作家鎌池和馬』のデビュー作であり、2018年時点で国内累計発行部数1660万部を突破している大人気ライトノベルです。スピンオフなどを合わせたシリーズ発行部数となると3000万部を超えます。

 

原作小説(ライトノベル)はファンの間で『旧約』と呼ばれるものが短編集合わせて全24冊。そこからタイトルを『新約とある魔術の禁書目録』と改めて全22冊。そして再びタイトルを改めて『創約とある魔術の禁書目録』が1冊、『とある魔術の禁書目録SP』という番外編が一冊の計47冊という大長編です(2020年4月時点)。スピンオフを入れたらやばいです(やばい)。

 

さて、このとある魔術の禁書目録(以下 禁書)には『筋ジストロフィー』という病名が出てきます。原作小説で言うと3巻のクライマックスに入る前の1、2ページほどだけ。スピンオフ作品でも少しだけ触れられています。

この筋ジストロフィーという病気を知っている方はいるでしょうか。

 

もしかしたら禁書を読んでいる方の中には禁書で知ったという人もいるかもしれません。或いはスピンオフ作品から入った人は『とある科学の超電磁砲』(以下 超電)で知ったという人もいると思います。

筋ジストロフィーについて、原作小説では少しだけ解説がされています。しかし、実は間違っている部分があります。それは禁書3巻が2004年、つまり15年前に発売されているので仕方ないのかもしれません。或いは内容的から考えてわざと間違えた可能性もありますが……。

そこで今回は今現在の筋ジストロフィーについて解説してみたいと思います。

思うままに書いていくので読みにくいかもしれません。ご容赦を。

 

ではさっそく、原作小説から引用して解説すします。

最初に指摘するのは次の部分です。

 

筋ジストロフィー。原因不明の不治の病の一つで、少しずつ筋肉が動かなくなっていく病気の事だ。体を動かさないと筋力が落ちるのと同じく、それは徐々に全身の筋力を奪い、やがては心臓や肺の自由すら奪ってしまう。

 

まず「徐々に全身の筋力を奪い、やがては心臓や肺の自由すら奪ってしまう」は正しいです。

ただこれに関してどうしようもないのかというとそうではありません。心臓が悪くなれば心臓の薬があるし、肺についても対処法はあります。

 

たとえば人工呼吸器。これは文字通り人工的に呼吸を補助するものです。

「気管切開」を用いた「侵襲的人工呼吸法」タイプと身体にメスを入れることなく使える「非侵襲的人工呼吸法」タイプがあります。これにより呼吸をすることができます。

勘違いされやすいですが、筋ジストロフィーにおける人工呼吸器は「酸素を送り込む」ものではない。「空気を送り込む」ものである。スキューバダイビングをしてる人なら背中に背負うタンクと同じといえばわかると思います。酸素だけではダメなのです。

例外もありますが、基本的に筋ジストロフィーに「大量の酸素を送り込むのは害」となるので酸素だけ送り込むことはしないです。吐き出す力も低下するために逆に二酸化炭素が溜まってしまうからです。

 

また人工呼吸器だけでは肺を保つことはできない。そこで肺のリハビリとして「カフアシスト」という強制的に多くの空気を肺に送り込み肺を膨らませる機械も併用します。

人工呼吸器と同じでは? と思うかもしれません。しかし違うのです。

 

人工呼吸器はあくまで呼吸を補助するための機械です。けれど、カフアシストは筋力低下によって弱くなった肺を固くしないよう拡げるために使ったり、「咳を出す補助をする」機械なので目的が違います。要は肺を柔らかく保って、肺に入る空気の体積を減らさないようするための治療機械です。

 

ところで「咳を出す補助をする」という部分について疑問に思った人もいるかもしれません。

筋ジストロフィーは肺機能が落ちていくので、結果「咳を出す力」が弱くなる。そうなると痰が絡んだ時に出せなかったり、食べ物でむせた時に吐き出さなかったりするのです。老人がお餅を喉に詰まらせた時と同じです。

そのためのカフアシストです。

 

カフアシストは強制的に空気を大量に送り込み、なおかつその後で「空気を吐き出させる」ので咳が出しやすくなります。筋ジストロフィーにとっては大切な機械だといえます。。

この人工呼吸器とカフアシストによって筋ジストロフィーの寿命は伸びています。

ただし、筋ジストロフィーの種類によっては使わない場合もあります。

 

次は間違っている箇所について。

まずは原因不明という箇所。実は原因は判明しています。結論から言えば原因は「遺伝子の不具合」です。

 一口に筋ジストロフィーと言っても様々な種類があるが、そのほとんどが遺伝子に何らかの異常が見られる。それが原因で筋肉に異常が出るわけです。

 筋肉の異常というのは「筋肉が壊れやすく、再生されにくい」というものです。

 

健常者の場合、「筋肉を壊し、それが再生することによって筋肉が増える」が、筋ジストロフィーは再生されにくいのでだんだんと筋肉が減っていき、筋肉が増えることはないのです。つまり「筋肉が減るのなら鍛えればいい」という理屈は通じません。

逆にさらに筋肉を壊すことになるため、筋トレは逆効果になってしまうわけです。ただしまったく筋肉を動かさないとそれはそれで今度は別の問題が出てくるので、疲れない程度の運動は必要となってきます。

 

また、禁書の中では「筋肉が動かなくなっていく」とあります。認識としてはそれでも間違ってはいないのですが、より正確に言うのなら、「筋肉が壊れ減っていく」が正しいです。その結果として、身体が徐々に動かせなくなっていくわけです。

 

また諸事情で全文は引用しないが、引用外のところで「生まれた時から自分の思った通りに体を動かすこともできず」という記述があります。

これは半分間違いで半分正しい。

デュシャンヌ型」など生まれた頃はある程度自由に動けるものや、「ベッカー型」のように大人になって筋ジストロフィーと診断される例もあるもの、「福山型」など生まれた時から歩行困難な場合が多いものなどがある。なので筋ジストロフィーの種類にもよるといえます。

 

症状についての引用は以上。次の引用に移りたいと思います。

今度は治療方法についての記述。

 

筋ジストロフィーとは、自分の思い通りに筋肉を動かせなくなる病気。
そして、脳の命令は電気信号によって筋肉に伝えられる。
もし仮に、生体電気を操る力があれば、通常の神経ルートとは別の方法で、筋肉に命令を送る事ができるかもしれない。

 

これは禁書に出てくるヒロインの一人であり、超電の主人公でもある、電撃を操る少女、御坂美琴。彼女の能力を研究すればこうできるのではないかという推測からくる文章です。

 まず結論から言うと、この方法は有効でないと思います。

 

筋ジストロフィーは筋肉が減っていく、つまり動かせる筋肉自体がないので、筋肉に命令を送ったところで意味がない。ラジコンのコントローラーを動かしても、本体にモーターが入っていない、或いはタイヤが外れているから本体が動かないということ。

そもそも脳からの命令はちゃんと筋肉に届いています。

 

その証拠に動かない手足にCYBERDYNE株式会社のロボットスーツ「HAL」を装着すると、生体電位信号を感知してHALが動くのです。(ただし常時装着はだめらしい。あくまでリハビリテーションの一環として短時間)

ロボットスーツHALhttps://www.cyberdyne.jp/products/fl05.html

つまりおそらく禁書内の方法は使えないと思います。

断言できないのは筋ジストロフィーにもけっこうな種類があるからです。ですが前述した3つの型においてはそうだと言えるはずです。

 

では実際に治療方法はどういったものが有効とされているのか。

まずは薬物療法ですね。現在受けてる人も多いと思います。ただこれは進行を遅らせるものです。

次に遺伝子治療。遺伝子そのものに治療を施す方法です。

そして再生治療。iPS細胞はとても期待されています。

まだ完全に治すものはないですが、いつの日か出てきてもおかしくはないです。

具体的な治療法などについて詳しくはここで語らないが興味がある人は調べてみてください。「日本筋ジストロフィー協会」のホームページにて紹介されています。

治療法の研究について

治療法の研究は進んでいるのですか? | 一般社団法人 日本筋ジストロフィー協会

この他お知らせ一覧の中にもいくつかあるので興味があれば覗いてみてもいいかもしれません。

 

さて、ここまで禁書の筋ジストロフィーについての記述について、否定やら訂正やら補足をしてきました。満足してもらえたかはわかりません。けれど筋ジストロフィーがどういうものなのか知る機会になれたのなら幸いです。

 

以上です。ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

ではまた。

(質問などあればコメントにてどうぞ。答えるのが遅くなるかもしれないですが、僕のわかる範囲で答えます。また間違っている部分があればお知らせください)